ちょっと愚痴をきいてほしい。
その日アティトラン湖畔のパナハッチェルに行こうとしていた。グアテマラシティから走ってきたバスは、ロス・エンクエントロスで私をおろした。パナハッチェルまでの直行バスではなかったようで、乗り換えないといけないらしい。乗ってきたバスの助手がすぐ目の前に停まってるバスを指さし、
彼は今日、チチカステナンゴから来たとこだそうだ。クリスマス休暇に全部で2週間ぐらいの旅行をしてるんだ、と彼は言った。最初の5日間はアンティグアでスペイン語をならってホームステイし、昨日はチチカステナンゴ、今日はパナハッチェルで、明日はまた別のとこ、そしてグアテマラのあとはコスタリカに行くという。私もこの前コスタリカに行ったよって言ったら
しばらくしてバスターミナルについた。ツーリストが全然いなくて素朴そうで、地元のひとがにこにこしていて感じのいい町だ。私が荷物をバスから降ろすのを待って、彼は並んで歩き出した。けど歩いていても、どうもパナハッチェルの地図にある場所に出ない。おかしいと思って道ばたのひとに訊きはじめた。何人かに町のメインストリートを訊いたけど知っているひとがいないので、変だなと思い
広場で今度こそパナハッチェル行きのバスに乗り込んだ。それからぐねぐねの山道を15分ほど走ってパナハッチェルについた。彼は今日パナハッチェルの宿に荷物を置き、湖岸のサンタクルス・ラ・ラグーナに観光にいってみると言っていた。彼のきいた話じゃけっこうきれいなとこらしい。おもしろそうだと思わない?とちょっと誘うようなくちぶりだった。私も行こうかな、と思い始め、バスを降りてまた並んで歩き出した。一緒に宿探しをすればあとで待ち合わせする面倒もない。
パナハッチェルの街はだいぶ栄えていて、さっきのひなびたソロラの町とは大違いだった。メインストリートの両側にはおみやげ物を商う店が軒を連ねているし、西洋人のツーリストがとても多く、アメリカのポップスをかけてるオープンカフェがいくつもある。彼はあっちを見たりこっちを見たりして「わあこりゃすごいや」と声をあげてた。この町の雰囲気が気に入ったみたいだ。でも話しかけてもちょっとさっきより口数が少ない。
ホテルの看板を探しながら歩いていたら彼はだんだんそわそわしはじめた。そして、
なんか捨てられたような気になって、立ち止まって「地球の歩き方」を出し、ホテル情報に目をとおして、道をちょっと戻ったホテルにチェックインした。湿っぽい部屋だったけど、ほかの宿を探そうと思ったら、さっきのインターネットやの前を通らないといけない。彼が、私をやりすごすための方便でインターネットやに入ったとしたら、ごく短時間で出てくるところを見たくなかった。知り合いでも見かけたのならそう言ってくれてもよさそうなもんだけど、そんなふうでもなかったし。
私が疲れてるから悪いほうに考えてるだけなんだ、彼はやりすごそうなんてつもりじゃなかったんだと自分に言い聞かせてみる。気晴らしにおもてに出ても、何もかもツーリストむけにアレンジされたものばかりでなんだか疲れる。
その日は対岸の町に行く気がしなくて、翌日になって昼過ぎからボートのりばに出かけた。湖岸には大小10ばかりの町がある。どこでもいいから行ってみようかなという気になっていたら、まもなく出発らしいサンペドロ行きのボートがあった。料金は20ケツァル(3ドル弱)という。ちょうどバックパック背負ってきた白人の女の子たちがいて、
だけど寄ってくるのはチャーターボートばかりで対岸まで30ドルとかいうひとばかり。ある客引きは、
昨日のことが尾をひいてるわけじゃないだろうけど、なんかテンションが下がってきた。1時間バスに乗っても1ドルかからないような国で、ぼられてるのわかって対岸に行ってもいいことないような気がした。むこうについても結局はカネカネできっと気がめいるだろう。ひきかえしてさっきの女の子たちに「安いボートは見つからなかった」って告げようとさっきのあたりを探したら、サンペドロ行きのボートもろとも消えていた。バックパックかついで来ていたから、またパナハッチェルのホテルに戻ったとは考えにくい。たぶん出発間際に交渉がまとまったかして行ってしまったんだろう。大きい声で呼んでくれれば届く距離だったのに・・・
また、捨てられた気がした。
アティトラン湖に恨みはないが、背をむけて宿に帰ったのだった。
|