この子は授かりもの

 マラウィのンカタベイのあるレストランで、ちょっと早い晩ゴハンを食べてたときのことだ。若い奥さんがすごくちっさい赤ちゃんを抱いてはいって来たので、
「かわいい赤ちゃんですね」
って言ったんだ。奥さんはにっこり笑った。私が、
「何ヶ月?」
って聞いたら奥さんは、
「まだ1ヶ月半なの。小さいでしょう、未熟児だったのよ」
ってこたえた。

 赤ちゃんは眠っていただけなんだけど、元気がないのかと勘違いして、
「いまも体弱いんですか?」
って訊いたら、奥さんは、
「ううん、いまはとても元気」
って答え、それから、
「彼女は授かりものなの She is a gift.
って言った。

私は”赤ちゃんは神さまからの授かりもの”っていう意味だと思って何気なく
「そうですよね」
って相槌を打ったんだけど、奥さんはまたにっこりして、
「この子はバス停にいたのよ」
って続けた。

 この赤ちゃんは1ヶ月半前のある朝、バス停で放置されていたところを発見されたんだそうだ。赤ちゃんは湖のほとりのこの町の、バスターミナルの片隅で生みおとされ、うち棄てられて夜を越し、翌朝になって見つかった。熱帯の夜は時として豪雨になることもある。そうでなくても夜間は急激に冷え込むものだ。彼女がたったひとりで生き延びたのは奇跡といってもいいかもしれない。

 発見されてすぐ、赤ちゃんは警察に保護された。警察は里親を捜し、奥さんのところにひきとってくれと頼みにきた。奥さんは最初少し戸惑ったけれど、結局彼女をひきとった。

「そういうことって、よくあることなの?」
私が訊ねたら奥さんは、
「めったにないけど・・・まれにね」
って答えた。奥さんには5才くらいになる女の子がひとりいるんだけど、彼女はすっかりお姉さんらしくふるまっていた。そして奥さんのおなかには、赤ちゃんの妹か弟になるべき新しい命が、すでに誕生のときを待っている。

「この子、あなたに会えてラッキーですね」
って言ったら、奥さんは母としての余裕ある表情でほほえみ、大事そうに赤ちゃんを左の胸に抱きなおすと、ゆったりと奥へ歩いていった。

赤ちゃんはすくすくと育つだろう。

人生って、こういういい話を聞くためにあるんじゃないかなあと、
思ったよマジで。
人間てほんと、すてたもんじゃないよね。