| お席がございません | |||||||||
午後4時になったので荷物を持って外にでた。台北駅裏のバス会社のカウンターで、国際空港までね!と言うと間もなく来たマイクロバスに乗せられた。途中大きなバスへの乗り換えなんかもあって、どのバスに乗ったらいいのか迷ったり、バスのチケットを買うのを忘れてたりしたけど、次々に親切な若い台湾の人があらわれてあれこれ世話をやいてくれた。
チケットの買い方を教えてくれた女の子は私と同じバスに乗った。彼女もこれから空港に行き、私の少し後のタイ航空の便でタイに行くということだった。バスの中でずっとおしゃべりしていたら、年齢を言ったとき「うっそー!!ティーンエイジャーか20才くらいだと思っちゃったー!」と言っていて、若く見える記録を更新してくれたりした。
若く見られたからって別にツイてるってことにはならないけど、なんかちょっとうれしい。最近ちょっとツイてないこと多かったけど、この間の風邪で打ち止めだったんだなーなどと思う。空港にも順調に1時間で着いた。もうチェックインの時間になっていた。
さて空港に着くとまず両替をした。1000元札がまだ2枚もあって、総額で1万円ぶん以上のお金を持ってたから。出国手続きのあとでもいいかなっと思ったけど手近に銀行があったので再両替しておくことにした。お金は50円ぶんくらいを残してちょうどUSドルで80ドルになった。いま1ドル122円くらいだから、さっきまで1万円以上だったものが1万円以下になってしまった。多めに両替しとくものじゃないなと思った。再両替は、両替率が悪くてホントに損だ。
「今日の便に予約をして昨日リコンファームもしましたが。」と言ったら、彼は
目が点になってしまった。
自分の眉毛がどんどん情けなく下がっていくのを感じる。でもこういうとき、しっかり文句をいわないで相手のいいなりになっていると泣き寝入りすることになるって誰かから聞いたことがある。よし。眉毛下がってる場合じゃないわ。怒る覚悟を決めた。もし席が足りなくて、自分で台北に戻って自費で泊まって、自費で再びバスに乗って後日もう一度来るなんて最悪。
前に立つと、イエロー・タイは言った。「お名前がコンピュータにないみたいなんですが、予約番号はお持ちなんですか?」失礼しちゃうわね。なんか、ほんとに予約したのかどうか、私をうたがってるみたい。チケットのカバーに書き留めてあった予約番号を見せると彼はそれを持ってどこかに行き、しばらくして紙切れを持って戻ってきた。そこには5JUNと書いてあった。
予約の変更と、それから予約の再確認のために予約オフィスに電話したとき、電話をとったのは2回とも同じひとだったと思うけど、とても発音の悪いひとで私は何度も聞き返したんだ。昨日の予約確認のときには、
でもだ。「どっちも悪いならお互い様。席がないならしょうがないですねー」とか言ってスゴスゴと台北に帰るわけにはいかない。もう再両替しちゃったから台湾元も50円ぶんくらいしかないし。それに今日メールを送らないといけないのにまだ送ってないし、台北ではインターネットカフェを1軒も見つけられなかったし、かといって電話のあるホテルに泊まろうにも、私が払える金額のホテルはみんな「連れ込みホテル」なんで、ちょっとひとりじゃ入れないんだ。台湾にビザなしで滞在できるのは2週間までだからもう期限切れかけてるし。意地でも今日タイに飛ぶ。
彼は顔色ひとつ変えずに
「ベストを尽くしてダメだったらどうしてくれるの?」と食ってかかったら「いやそのときはお詫びするしかないですね」なんて言ってる。態度はとても丁寧なんだけど、休暇で来てるこんな小娘が、何日か乗り遅れたところでどってことないだろうっていう雰囲気がにじみ出ているように思われた。わー私ナメられてるんだわ。こういうとき童顔のチビッコは損だ。どうやって逆転すればいいのかしら。
「だってそちらのミスでしょう!」と強気に出てみた。たまたまそういうフレーズが、フレーズブックに載っていたから言ってみただけだけど。「とにかく、席をみつけなさい。それがあなたの仕事じゃないんですか!?」もう見つけて『ください』(please)とかもつけないんだ。これもどっかに書いてあったフレーズ。こんな客私だったら絶対相手するのイヤ。日本語じゃとても言えないようなキツい言葉だ。
でもイエロー・タイはコドモをあやすように「もちろんわかってます。とにかく私を信じて。なんとかしますので」と言った。・・・でもダメだ。お詫びするしかないですねなんて言われたままじゃ、席がなかったときやっぱり自費で台北だ。
こういうやりとりになったらこう言えって何かに書いてあったんだ。『他のお客様に予定を変更してもらってでも私の席をつくってちょうだい』とか、『他のお客様に予約を変更してって言えないのに、どうして私には言えるの?ここの航空会社は客を差別するの?』とか。それはうまく文章が組み立てられなかったので言うのはやめた。でも文章をくみたてるのに悩んでいる間、私は相当むぅっとした顔をしていたらしい。今鏡の前でつくってみても相当恐ろしく見える顔を。イエロー・タイはここでかなり私の気持ちを察したようだ。丁寧だけど小娘に対するような接し方が、ちょっと変わった。
むっとした顔のままで「なんとかならなかったらじゃあどうしろっていうんですか。このまま台北に戻ってあと2日待てっていうんですか?」と訊ねてみた。次の便は2日後だ。そしたらイエロー・タイは「いや、2日では・・・」と口ごもった。2日後もいっぱいなのか。じゃあいまの予約どおり4日後の便に乗せるつもりだな!?
![]() イメージ・台北の有名な「円環」 (マル公園)はなぜか半分が営業停止
やった。ついにエンドースするって言わせた。私の格安チケットはもちろんスイス航空のみ有効だ。航空券って、安ければ安いほど、えてして変更がきかなくなるもの。正規のチケットだったら他社への振り替えとかもかなり自由にできるけど、私のやつは日付変更ができてもエンドースはできない、ってはっきり書いてある。でも今回は航空会社側のミスのせいだから、特例として取りはからうっていうことだね。
そこまで聞いたら安心した。あちらでお待ちくださいと言われて、のしのしとロビーに行き、席にどかと座ってみた。そいで、ちょっとただの旅行者じゃない雰囲気づくりをするため、ムダとは思ったけど席でパソコン出して日記つけてみた。
30分くらいして、もう搭乗が始まる時刻になって、ああ、こりゃもうこのあとの、さっき同じバスで来た女の子が乗るっていってたタイ航空にでもエンドースされるんだろうなぁと思い始めていたころ、やっと彼がやってきてこちらへどうぞと言った。あ、この便に空きができたのか。呼ばれた先がファーストクラスのカウンタだったのでちょっと期待した。
航空会社ではひとつの便に座席以上の予約を入れてしまった場合に、空きのあるビジネスクラスやファーストクラスにアップグレードすることで予定の人数を乗せることがある。私はヴァリグブラジル航空の夏休みの便でアメリカに2回行ったことがあって、往復計4便のうち3便まで席が足りなくてビジネスにアップグレードされた。(しかも関係ないけど私のうしろの方の席にはムツゴロウさんがいたんだ!ほんとに関係ないけど)という記憶があるので、もしかして今回もそれでアップグレードになったのかと思ったのだった。
でも係の女の人から手渡された搭乗券には、残念ながらエコノミーと書いてあった。エコノミーか。そんなこんなで結局当初の予定と変わりなく、予定の便に座れるべくして座れたと言う結果になったんだけど、でもまあいいやエンドースしますからという言葉を聞くことができたので、がんばれば航空会社は動かせるということがわかった。それと、以前インターネットカフェで一カ所のサイトにもつながらなくてドキドキムカムカしながら文句を言ったときに比べると、かなりドキドキの度合いが少なくなったような気がした。
まあここは先進国の航空会社の空港カウンターだから、タイの地方のインターネットカフェと違って「誰が出てきて何を言われるかわからない」っていうこわさはなかったわけだけど、言わなければいけないときにちゃんと言うっていう選択肢を、自分が少し身につけてきてるような気がした。搭乗券を振ってイエロー・タイに一応挨拶してから出国手続きに向かった。イエロー・タイは満面に笑みをつくり「よいご旅行を!」と言って手を振った。
出国手続きを済ませたらもう搭乗が始まっていた。だからもう全然空港内とか免税店とか見てまわることができなかった。早めに再両替を済ませておいてよかった。私の席は33列の窓側で、通路側には女の人が座っていて、真ん中の席は空いていた。2人連れでキャンセルしたひとがいたんだろうな。キャンセル待ちの1番に入れさせていただきました、なんて恩着せがましくいわれたけど、2番はいなかったのね。
飛行機の中では「エネミーオブアメリカ」を見たらしい。殺された女のひとは主人公の何なの?主人公のお仕事はなんだったの?途中から助けにでてきてくれたおじさんは殺されたおんなのひとの何なの?どうしてあのおじさんはあんないろいろなことができるの?日本人なんかほとんど乗らないフライトで、イヤホンからは英語が流れてるし字幕は北京語。細部がさっぱりわからない。でも様々な疑問が解けないままに、それなりに非常におもしろかった。くわしいいきさつは誰かにあとで聞こう。
通路側の席の女の人はとってもせっかちな人で、まだ飛行機が止まりきらないうちにシートベルトをはずした。彼女のベルトをはずす音を聞いてまわりのひとが一斉にベルトをはずした。機長が「安全ベルトは飛行機が完全に停止するまではずさないでください」って英語でアナウンスした。でも彼女は台湾人だから気づかなかったのか、そのアナウンスでシートベルトしめなおしたりはしない。機長はそのあとドイツ語でも多分同じことを言って、しめくくりにフランス語でメルシーと言っていた。スイスはドイツ語とフランス語とイタリア語の国ときいたけど、「精密機械の国・スイス」の、なんか意外にアバウトな側面をいろいろ見た気がした。
バンコクは雨。さあ、ここでビザをとったらいよいよインドだ。
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