| 台湾で髪を切った日 | |||||||||||||||
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とりあえずの対処法を見付けてパソコンの故障はひと段落したと思ったら、今度は自分がダウンしてしまった。台湾東部の山の上のロッジで風邪をひいたのだ。そういう涼しいところに限って水シャワーだったものだから、ふと気づいたらのどがばっちり腫れてしまっていた。翌日気圧の変化のせいで耳がおかしくなりながら、バスで8時間もかけて山を下りてきた。ちょっと寝込んで、やや回復して、まだ熱があったけど部屋にいるのに退屈してきた頃、「どうせ今日は観光もできそうもないし、もうかれこれ4ヶ月も髪を切ってないことだし、台湾にいる間に美容室に行こうか」と思ってふわふわと出かけるとにした。
私の持ってるガイドブックは「台北のヤングに人気」とか「休日にはたくさんのアベックが訪れる」とかいう死語が臆面もなく書いてあるような古〜い書物なので、どのくらい信じていいのかわからなかったけど、この本を見るに、台湾の美容室は安くて腕がいいと書いてある。私の知ってる何人かの旅行者は、ミャンマーで髪を切ってもらったり、タイで切ってもらったりして、それなりにうまく行ってるひともいたけど泣いてるひともいた。やっぱりここは「腕がいい」ってお墨付きの国で行っとかないと、この先ちょっと髪は切れないなと思っていたのだ。
![]() 楊立国際美容名店。 このお店でカットしてもらいました
あちこちの髪切りやをのぞいて見ていたら、裏通りの店先にトロフィーが飾ってある店を見つけた。雰囲気も悪くなさそうなので入ってみたら、かわいい美容師さんが何か話しかけてくる。今日はいかがいたしましょうかとか言ってるんだろうな。台湾人と日本人は全くってほど見分けがつかないから、私が北京語を喋れないとは想像もしてないみたい。ここ台中は、台湾で第三の都市とはいえ、裏通りだし、こんなとこに日本人が来ることはまずないんだろう。
それが終わると美容師さん、奥に行ったと思ったら手袋して手にこっっってりシャンプーを盛ってきた。そしてあろうことかこってりのシャンプーをわたしのあたまにその場でのせ・・・シャンプー台じゃないとこで洗髪がはじまった。シャンプーに、ホットドッグ用のケチャップ入れみたいな器で水をそそいで泡立て、泡立ちが悪くなるとまた水をそそいで泡立てる。水かける前に直接シャンプーを髪と地肌につけるなんて、髪に悪そう。美容師さんはおもいっきりツメたてて、がしがしと洗ってくれる。
そういえばどこかの国の美容室は席でそのまま洗髪が始まるってどこかで読んだことがあったけど、それがまさに台湾だったのか。たしかそこには、慣れてるので「決してい泡はとばさない」って書いてあったけど、このお嬢さんはめいっぱい泡とばしてくれてるぞ。まず手にポタ、ポタ。つづいて服にベタっと泡が落ちた。美容師さん、服に落ちたときやっと気づいてタオルをホイと貸してくれた。自分で拭けっていうことかー。
これってもしかして、シャンプーのリザーブだろうか?それとも「今日はヴィダルサスーンで洗って」とか注文できるのか・・・?どうしてこんなにたくさんシャンプーがあるの?って、一応聞いてみたけど、中国語なのでやっぱりわからなかった。
席に戻されて今度はカットが始まることになった。でもこの注文がまたむずかしい。「髪型は変えずに、厚ぼったくなった部分を薄くして、先端の傷んでる部分を切ってください」と言いたいんだけど、それを漢字で以下のように書いてみた。「不変更髪型。切断末端損傷的部分 厚的部分薄化」
これを読んで一旦美容師さんはうなずいたものの、確認するように紙に「修一下」と書かれた。えっ、これどういう意味?学生の頃まじめに漢文をやっておけば今ここで悩まなくても済んだのかしら。考えてもわからないので「ただ揃えてほしい」という意味のつもりで「唯揃」と書いてみたら「ハェッ?」と言われてしまった。こっちでは揃えるっていう字ないのかしら?意味が違うのかしら?バラバラの髪の毛を描いてハサミと切取線を書いてみたけど、まだ悩んでる様子。
彼女はその下に「齊」という字を書いた。それがまたわからない。これ、「一斉」の「斉」の旧字体でしょ。ということはそろえるって言う意味があるかな。わからないって首を振ったら「打」という字と「薄」という字を書かれた。打つ?んーーー?でも全体に厚みをとってほしいので、それでいいやと思って「薄」という字を指さしたら、確かめるように「髪型不変」って、「髪」や「変」の字を少し日本と違う書き方で書き直した。私、ウンウンとうなずく。それでやっとカットがはじまった。
日本で私がよく行ってた美容室に比べて、カットはすごい丁寧だった。髪を上から4段に分けて、裾から丁寧に長さを揃えていく。顔のまわりも丁寧に左右見比べながらシャギーを入れていく。
ただし私の髪は左右の髪の流れが違うのでバランスをとるのが難しいみたい。そうでしょ?すいません。いきつけの地元の美容室の店長でも、いつもこのバランスをうまくとれるとは限らないんだ。逆に言うとこれでバランスをとれたらかなり腕がいいってことだ。彼女は丁寧に丁寧に両方の髪の量を確かめながら毛先を揃えていく。
切っている最中、前髪が厚ぼったいのが気になったので前髪を指さしてからさっきの「薄」という字を指さしてみた。そしたら梳きバサミをとってきてジャキジャキやってくれた。
髪をきれいに切ってもらって、しかも想像したよりも安かったのでとても機嫌よく帰ってきたら、途中の文具やさんで福袋を売っていた。福袋って書いてないけど、50元(200円)で、「超人気的組合系列」って書いてある!!
一定の予算をたててたものが安くあがったとき、残ったお金を貯めるか、使っちゃうかが、お金持ちになれるかどうかの大きな分かれ目なんだって前に会社の同期の子が言っていた。ちなみに私は喜びいさんで使っちゃうほうだ。とはいえいまは旅のそら。余計なモノはふやさないに限る。それなのに私の手は自動的にポケットをさぐり、「ああっ荷物が増える!やめるんだ!」と思ったときには50元払って一袋小脇に抱えていた。熱だ。熱が私の判断を誤らせるんだ。福袋には予想どおりしょうもないものが入っていた。50元払って、使えるものはメモ帳だけ。残りはほとんど宿のおばさんにあげてしまった。
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