| 余ったビール | ||||
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昨夜は、絶対泊まってはいけないようなところに泊まった。大部屋じゃないんだけど、部屋っていうか、カーテンで仕切られただけの場所なのだ。これで30ドルもするんだから驚くべきって感じだ。ここはサンディの宿だし、バタム島に行く前に泊まって安全だってことはわかっていたから泊まったけど、カーテンはみすぼらしいし、天井の扇風機はゆさゆさ揺れてるし、たぶん親がみたら泣くと思う。
ちょっと話は前後するけれど、実はバタム島へ行く前、ちょうどサンディの宿にいたロバートデニーロ(濃いカオをしたひと、ぐらいに思ってもらえばいいかな)がチャイナタウンに行くというので一日一緒に行動していた。このひとはイスメットといって、育ちはオランダ、いまはスイスで働いているトルコ人だ。
最初会ったときイスメットは、クレジットカードでトラブルがあってシンガポールで足止めされていると言っていたのでちょっと警戒していた。旅先でお金貸してくれなんていわれたら絶対返ってこないから困ると思ったのだ。でも全然そういうハナシにはならなかったし、歳が同じなので話しているうちに意気投合して、「夏には里帰りしてるからトルコに遊びにおいで」とまで言ってもらった。
彼はちょっとおもしろいひとだった。フードセンターで豚の角煮丼を食べ、イスラム教のモスクに寄ったら「僕はイスラム教徒なんだよね」なんて言い出すのだ。
私がバタム島に出発したとき、イスメットはクレジットカードがなんとかなるまで、まだしばらくシンガポールにいると言っていた。それなら戻ってきたときまた会えるねと言って出発したのだ。
「彼は行っちゃったわ」とサンディおじさんの奥さんが言った。 部屋はあるか聞いたら、カーテンで仕切られた部屋しかないということだった。カーテンのうしろでベッドに寝転がって、なんだかあ〜あと思ってしまった。
夕食の時間まで昼寝をしていたら、カーテンのむこうでドイツ人がでっかい声でおしゃべりをするので目がさめた。それでお風呂に入ったら、とたんにさっきのドイツ人の一行の女のひとが戸をたたいて「あと何分くらいかかるの?」と聞く。
「えーと、あと15分くらい・・・」と答えると
たぶん階下でほかのトイレを借りたと思うけど、急いで5分でシャワーを終えて出て「おわったよー」と声をかけてもだれも返事をしなかった。女の人の「トイレに行かなくちゃいけないのに!」という非難がましい言い方と、自分が言った「知らないよ」という素っ気ない言い方になんだか気持ちが沈んでしまった。ううん、イスメットがいなかったときからもう沈んでいたのかも。
旅先でできる友達は割が合わない。知り合うときはすごく用心しなくちゃいけないからなかなか親しくなれないし、親しくなってしまうと別れるときはめちゃくちゃ寂しいんだ。でも喜びも哀しみもあっての旅だからね。買ってきたビールのうち3本をバッグにしまって1本あけてひとりで飲んだ。冷えてないビールはなんだかとっても苦かった。
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